Mag-log in冷徹で有名な議員秘書、近江隆之介は、新入事務員の高梨小鳥にエレベーターで一緒になり一目惚れする。そんな二人が新人歓迎会で出会い、小鳥は泥酔状態。そのまま二人は一夜を過ごすが、なんと同じマンションに暮らす隣人だった!近江隆之介は自分の身の上を隠し逃げ惑う。小鳥は、顔を知らない一夜の相手を探して右往左往。二人の恋の行く末は。
view more桜舞い散る季節に、二人はエレベーターの箱の中で出会った。視線が絡み合い頬が火照る。胸は高鳴りその姿に釘付けになった。
あの人は誰
あいつは誰なんだ
そんな二人が恋に落ちるまで、ほんの少しだけ時間が必要だった。
薄暗い部屋に、芳醇なウィスキーの香りが漂っていた。まるで琥珀色の記憶のように、香りは彼女の首筋をそっと這い上がり、舌先の温もりと共に肌をくすぐった。彼女の細い指先は、仄かに桜色に染まりながら、彼の逞しい肩甲骨をなぞる。そこには、鍛え上げられた男の輪郭が刻まれ、触れるたびに彼女の胸から小さなため息がこぼれた。
彼の筋肉質な手は、力強くも優しく、彼女の豊満な胸に触れた。指先はまるで命あるもののように、ゆっくりと脇腹を滑り降り、彼女の肌に微かな戦慄を残す。静かな部屋に、彼女の唇から漏れる微かな喘ぎ声が響き、まるで夜の囁きと溶け合うようだった。
「お前が好きだ。俺はお前が好きなんだよ、覚えておけ。」
彼の声は低く、熱を帯びて耳元で繰り返される。その言葉は、まるで呪文のように彼女の心を縛り、互いの脚を絡ませた。絡み合う二人の熱は、全身に滴る汗となり、部屋の空気を重く、甘く変えた。時間は止まり、ただ二人の鼓動だけが、夜の静寂を刻んでいた。
桜の花びらが舞う金沢の夜、薄暗い部屋にウィスキーの琥珀色の香りが漂う。あの春、近江隆之介の低く熱を帯びた声が響いた。「小鳥、お前が好きだ。覚えておけ。」 その言葉は高梨小鳥の心を捉え、時を止めた。二人の鼓動が夜の静寂を刻み、愛は確かに芽生えた。 それから三年。議員秘書から金沢市議会議員へと姿を変えた近江隆之介は、街頭で「金沢城を世界遺産に!」「市民の暮らしを守る!」と訴える。傍らで小鳥はのぼり旗を握り、車窓に向け笑顔を振りまく。 もうすぐ市議選。宿敵の楠木大吾との一騎打ちが待つが、隆之介の背後にはいつも小鳥の温かな眼差しがある。「小鳥」「ん、なに?」 照れくさそうに鼻先を掻き、近江隆之介は呟く。「やっぱり、お前が好きだ。」 小鳥は笑い、「あの夜のこと、急にね!」と返す。あの春、偶然の夜を共にした二人は、今、金沢市議会のおしどり夫婦と呼ばれる。二人の愛は、息子・ひなたに受け継がれる。 ひなたは近江隆之介のチラシにマジックで落書きし、得意げに笑う。その姿は、かつてライバルのチラシに鼻毛を描いた近江隆之介にそっくりだった。小鳥は腹を抱えて笑い、隆之介は優しく見守る。金沢の古い街並みを背景に、家族の笑顔が響き合う。琥珀色の記憶は色褪せず、愛と希望を未来へ紡ぐ。 隣の彼たちと一緒に。
妊娠5ヶ月目。小鳥のお腹が少しずつ目立つようになり、近江隆之介は毎晩お腹に話しかけるのが日課になった。「よーし、バブバブ!パパは金沢の未来を担う男だぞ!お前も立派な金沢っ子になるんだ!」小鳥は笑いながら「隆之介さん、赤ちゃんに議会演説しないでよ」と突っ込む。この頃、夫婦で赤ちゃんの名前を考えるのがブームに。近江隆之介は「金沢らしさ」を重視し、「兼六(けんろく)」や「輝(かがやき)」を提案。「兼六って、兼六園みたいでいいだろ?観光大使にもなれる!」「隆之介さん、名前で観光PRしなくていいの!もっと可愛い名前にしてよ!」 小鳥は「ひなた」や「さくら」を推すが、近江隆之介は「それじゃ全国どこにでもある!」と譲らない。ある夜、夫婦で名前リストを100個以上書き出し、ついに大ゲンカに発展。「小鳥、名前は一生ものだぞ!金沢の誇りを背負うんだ!」「隆之介さん、赤ちゃんが兼六園の看板背負って生きるわけじゃないでしょ!」 仲裁に入ったのは、久我今日子。呆れて物も言えないという顔をしている。「あなたたち、名前でケンカしてる場合じゃないわよ。性別分かったらまた変わるんだから!」 そう、性別判明の日が近づいていた。近江隆之介は「男なら兼六、女なら茶々(金沢の歴史上の人物、茶々姫から)」と意気込むが、小鳥は「絶対普通の名前にする!」と宣言。夫婦のバトルはさらにヒートアップした。 出産当日、最大の試練妊娠9ヶ月目。小鳥のお腹は立派なボールになり、近江隆之介は議会中も「もうすぐパパ」とソワソワ。だが、出産予定日が近づくにつれ、小鳥の不安も増す。「隆之介さん、ちゃんと立ち会ってよね。私、怖いよ・・・」「任せろ!俺は金沢市議だ!どんな試練も乗り越える!」 口では強気だが、隆之介は内心ビビりまくり。YouTubeで出産動画を見ては「うわ、こんなに大変なのか・・・」と青ざめる。そして運命の日。夜中に小鳥の陣痛が始まり、近江隆之介はパニック状態で病院へ。だが、運転中にナビを間違え、なぜか金沢城公園の駐車場に到着。「隆之介さん、ここ病院じゃないよ!?」「ご、ごめん!すぐ行く!」なんとか病院にたどり着いたものの、近江隆之介は立ち会い中に緊張で貧血気味になり、看護師に「パパさん、座ってて!」と椅子に押し込まれる。数時間の壮絶な陣痛の末、小鳥は無事に男の子を出産。赤ちゃん
金沢市議会議員、近江隆之介は、今日も市役所の会議室で熱弁を振るっていた。テーマは「金沢の伝統工芸を若者にどう伝えるか」彼の人懐こさは市民からの人気も上々で、支持者も増えている。 しかし、彼の人生が一変する出来事が、この日の夕方に待ち受けていた。近江家は、金沢市内の閑静な住宅街にある一軒家に住んでいる。妻の小鳥は、元気で少し天然な性格の持ち主。彼女は地元の小さなカフェでパティシエとして働いており、彼女の作る加賀棒茶のシフォンケーキは地元でちょっとした名物だ。その日、近江隆之介が議会から疲れて帰宅すると、リビングで小鳥がソファに座り、なぜか神妙な顔で小さなプラスチックの棒を持っていた。「隆之介さん、ちょっと座って。重大な話があるの!」 小鳥の声はいつもより1オクターブ高く、近江隆之介は一瞬「また何かやらかしたか?」と身構えた。小鳥は過去に、洗濯機に赤い靴下を混ぜて隆之介の白いシャツをピンクに染めたり、議会用の資料を間違えてシュレッダーにかけたりした前科がある。「なんだよ、小鳥。まさかまた俺のスーツを縮めたとか言うんじゃないだろうな?」 近江隆之介が半笑いで言うと、小鳥はムッとした顔で棒を突き出した。「これ見て!プラスよ!プラス!」 近江隆之介、棒をじっと見つめる。棒には小さなディスプレイがあり、確かに「+」のマークが。「・・・プラス? 電卓でもないのにプラスって何? まさか」 近江隆之介の顔がみるみる青ざめていく。「小鳥、これ・・・妊娠検査薬!?」「そうよ!隆之介さん、私、妊娠したみたい!」 その瞬間、近江隆之介の頭の中で金沢城の石垣が崩れ落ちる音がした(比喩)。彼は議会でどんな難題にも冷静に対応してきた男だが、この「妊娠」という二文字には完全にノックアウトされた。「やった!やったぞ!俺、父親になるのか!」 喜びの雄叫びを上げた直後、彼は勢い余ってソファから転げ落ち、テーブルに置いてあった小鳥の手作りクッキーを床にぶちまけた。「隆之介さん、クッキー!私の新作の加賀棒茶スペシャルが!」「ごめん、ごめん!でもクッキーより赤ちゃん!赤ちゃんだよ、小鳥!」 こうして、近江家の新しい物語が始まった。金沢の街を背景に、近江隆之介と小鳥のドタバタな妊娠・出産劇が幕を開けたのだ。 妊婦生活は想定外の連続妊娠が分かった翌日から、小鳥の生活は一変し
楠木大吾のキャンペーンは、まるでスタートアップ企業のプレゼンのようだった。「私たちはスマートに、データ駆動型でいく。金沢の課題は子育て環境と安定した老後。そこを押さえて、若者と高齢者、両方の心をつかむんだ」 インフォグラフィックを使った政策説明、インスタライブでのQ&A、そして地元YouTuberとのコラボ動画。対する隆之介は、昔ながらの街頭演説とビラ配りに全力を注いでいた。そこには新妻の小鳥の姿もある。選挙カーのマイクを握り、「金沢の魂を俺に預けろ!」と叫ぶ姿は、まるでプロレスラーの入場シーンだ。 近江隆之介のキャンペーンは予想外の苦戦を強いられていた。演説は熱いものの、政策の具体性が乏しく、若者からの支持が伸び悩んでいた。「金沢をデカくする!」というスッキリしすぎるスローガンも、市民には「具体的には?」と突っ込まれがちだった。 ある日、小鳥が事務所にやってきた。手に持っていたのは、和菓子屋「加賀の月」の新作スイーツ「五色だんご」。金沢の伝統的な五色生菓子をモチーフに、赤・白・緑・黄・紫の小さな団子が串に刺さっている。パッケージには「みんなで笑顔!」と書かれた可愛いシールが貼られていた。「隆之介さん、これをみんなで食べたらどうかな? 甘いもの食べて、元気が出るよ!」小鳥はニコニコしながら提案。隆之介は最初、「そんな子供だましで人が喜ぶかよ!」と鼻で笑ったが、試しに駅前で仲間と一緒に食べてみると・・・みんなの笑顔が広がり、効果は絶大だった。「これ、めっちゃ美味しい!」 市民たちが団子を頬張りながら、小鳥と隆之介の楽しい会話に耳を傾けるようになったのだ。しかも、小鳥の明るい笑顔と丁寧な接客が、年配の方々の心をガッチリ掴んだ。「小鳥、お前・・すげえな・・・」 近江隆之介は妻の活躍に目を丸くした。「えへへ、ただお団子焼いてただけだよ」 小鳥は照れ笑いしたが、彼女のアイデアは確実に票を動かし始めていた。 テレビ討論の大波乱選挙戦の中盤、候補者たちによる公開討論会が金沢市内のホールで開催された。楠木大吾はスーツ姿でクールに政策を語り、子育て支援やデジタル化のビジョンを分かりやすく説明。会場は拍手喝采だ。一方、近江隆之介は・・・。「金沢はもっと熱く、もっとデカくなきゃダメだ! 俺は金沢城を世界遺産に登録させ、観光客を倍増させる!」 隆之介はマイクを
「どうしたんですか。真剣な顔、変ですよ」 「俺、変?」 「はい」 近江がスーッと大きく息を吸い、吐く。「一つ議案があるんだけどな」 「議会ごっこでもするんですか?」 「ウルセェな」 「うるさいって」 「議会中は私語慎めよ、基本だろ」 小鳥は面倒なことだとゲンナリ。 「資料配布します。目、閉じて」 「その丁寧な言葉、気持ち悪いですよ」 ゴソゴソと動く気配。温かな手が小鳥の左手を持ち上げ、硬く冷たい感触が薬指に伝わった。(え、もしかして) 「目、開けていいぞ」 「は、はい」 薬指に輝石が散りばめられたプラチナの指輪。 「これって・・・、あの」 「石はダイヤモン
波乱の9月定例議会は閉会した。 その夜小鳥は冷蔵庫を開け、青白いライトに浮かぶガラスの器を取り出す。底を確認。カラメルソースが二層に分かれ、上出来。ひんやり心地良い。ベージュのギンガムチェックのトレーに木製スプーンを添え、リビングへ。ふと見下ろすと、カーペットで胡座をかく近江の髪から水滴がポタポタ。「もう! 近江さん、髪ちゃんと拭いてください!」小鳥は焦茶色のフェイスタオルを近江の顔に叩くように投げる。「おい、最近雑だな!」「そうですか?」「初々しいお前はどこ行ったんだよ。ん、ここか?」小鳥のルームウェアの裾を摘み、突起をツツツツと円を描くように撫でる。「あ、ん! もう、やめ
テレビには議長や市長に頭を下げる議員たち。田辺、藤野が着席、氏名標を立て、バインダーを開く。議場入口に菖蒲の花。豪奢な久我今日子が、臙脂色のバッジ、紺のタイトスーツ、白い開襟シャツ、黒のローヒール、黒縁眼鏡、巻き髪を紺のバレッタでまとめ、立っていた。「姉ちゃん、化けたな」「すごい。議員さんに見える」「そりゃ失礼だろ。あれでも議員なんだぜ」「ご、ごめんなさい」 久我今日子の目は議長席を鋭く睨む。「あ、あの人」「あぁ、キツネな。あいつお前に言い寄っただろ」「は、はい」 煙草臭い息、太ももに割り込むスラックスの感触が蘇る。「議会で一番偉いとか、信じられない」「まぁ見てなって
9月最終金曜日。金沢市議会9月定例議会が開会される。 犀川沿いのアパート、302号室。小鳥と近江隆之介の部屋には、涼しい川風が心地よく流れ込む。夜になると窓を少し開ければ、風鈴のチリンチリンという音が響き、小鳥モチーフのモビールがゆらゆら揺れる。部屋は二人だけの小さな世界だった。「・・・ん?」 朝、肌寒さに目が覚めると、近江隆之介の背中がない。小鳥はノーフレームの眼鏡をかけ、時計を確認。5:30。外は白々しい光に包まれている。タオルケットで素裸の胸を隠し、上半身を起こす。シャワールームから水音が聞こえ、キュッ、バタン、ギィとドアが開く。近江隆之介がタオルで頭を拭きながら現れた。「お、